カプコン公式設定・開発秘話 センチネルナイン徹底解明

6 カスタム分析(1) 特殊環境への適応能力

センチネル ナインの誕生

DSOのセンチネル・プロジェクトでは、対バイオテロ専用ハンドガンとして「P226E2」をベースとした様々なカスタムが開発された。
その中から最終段階では2種類までカスタムの候補をしぼり込み、トライアル(※1)を経てDSO採用の座を射止めたのが「センチネル ナイン」である。

「センチネル ナイン」というモデル名は、もともと開発当時に付けられた「9番目の試作モデル」を表すコードネームだったが、使用する弾薬が9mmパラベラム弾ということもあり、DSO制式採用を機にそのまま名称として使用されることとなった。

「P226E2」から、DSOの手で対バイオテロ専用ハンドガンとして生まれ変わった「センチネル ナイン」。
その最終仕様について、まずは「特殊な環境への適応能力」から見ていこう。

※1・軍や警察が新たに銃器を採用する場合、「トライアル」と呼ばれる採用試験が行なわれる。トライアルでは精度や耐久性をテストするために数万発もの実射を行なうほか、落下や衝撃、高温や低温などに対する厳しいテストも行い、採用基準に達するまで改良とトライアルがくり返される。対バイオテロを想定したDSOのトライアルともなれば、その内容はさらに過酷なものだろう。

エージェントが直面する「暗闇」という現場

エージェントが直面する「暗闇」という現場

バイオテロの現場において最も避けがたい状況、それは「暗闇」だろう。1日に1度は必ず夜がおとずれ、日中であっても暗い屋内は多い。電力供給がストップして照明がない状況も十分考えられる。
対峙する相手がエージェントたちと同じ人間であれば、暗闇は五分の状況だ。しかし、クリーチャーやB.O.W.の中には聴覚や嗅覚によって獲物を察知するものが存在する。暗闇での戦闘は、エージェントたち人間にとって圧倒的不利となりかねない。
「センチネル ナイン」では、暗所での使用について次のような対策をしている。

フロントサイト&リアサイト

フロントサイト&リアサイト

センチネル ナインのサイトは、ターゲットをとらえることに重点をおいている。サイトのドット部分には光を蓄えて発光する「蓄光剤」が注入されており、暗闇の中でもサイティングが可能だ。
フロントサイトのドットは四角、リアサイトのドットは三角と非常にめずらしい形状をしているが、これは不意の襲撃に対しても確実かつ素早くサイティングできるよう考案されている。
なお、サイトは光の反射がサイティングに影響しにくい「ステルス形状」となっており、さらに小型化することで衣服などにもひっかかりにくくなっている。

ボディカラー

ボディカラー

暗闇での作戦ということを考えれば、通常は装備のカラーを目立ちにくいブラックで統一することが望ましい。
だが、足場の悪さに転倒することもあるだろう。クリーチャーの強烈な一撃をくらって吹き飛ばされる可能性もある。そういったキッカケで万が一銃を取り落としてしまった場合、ブラック1色の銃を暗闇の中で探すのは困難だ。
センチネル ナインでは「薄暗い闇の中でも銃の存在を分かりやすくする」ために、スライドを始めとする一部のパーツをあえてシルバーにしている。

マウントレイル

マウントレイル

マウントレイルはベースとなった「P226E2」の仕様であり、「センチネル ナイン」独自のカスタムではないが、暗闇での作戦において欠かすことのできない仕様だ。
トリガーの前方、銃の底面にあるミゾをマウントレイルといい、ほとんどの銃は幅20mm(ピカティニー規格)のマウントレイルを採用している。この部分に、同じ規格のフラッシュライトやレーザーポインターを装着することができるのだ。
銃を両手で構えたままライトなどを点灯・照射できるため、特に屋内や夜間の戦闘が多い部隊では、マウントレイル仕様のモデルを採用することが多くなっている。

「腐食」に対する徹底的な対策

強力な消化液を発する、自立歩行型植物イビー(バイオハザード2)

「センチネル ナイン」には、リン酸塩皮膜処理(パーカライジング)が施されている。これは作動不良の原因となるサビを防ぐためのもので、水中での活動が多いアメリカ海軍特殊部隊SEALsのP226でも採用されている、メジャーな表面処理だ。

しかしバイオテロの現場では、雨や水ぬれで発生するサビ以外にも注意すべきものがある。クリーチャーやB.O.W.が発する体液だ。
この体液は人体に害をなすだけでなく、物質をも腐食・劣化させるおそれがある。そのため「センチネル ナイン」はリン酸塩皮膜処理をベースに、体液の影響をうけない特殊な表面処理をプラスしている。
これらの処理を外装パーツだけでなく内部パーツにも施すという用心深さから、「腐食」がもたらす影響の大きさをうかがい知ることができる。

SENTINEL NINE

なお、作動の要であるスライドは、サビや特殊薬品などに耐性のある「特殊合金製」の素材を使用し、強度や耐久性を考慮して切削加工で作られている。

スライドの左側面にはモデル名(SENTINEL NINE)と口径(9mmx19)、そして組織名(Division of Security Operations)、さらにDSOのモットーである「PEACE THROUGH FIGHTING(戦うことで、平和を手に入れる)」という言葉が刻印されている。スライドに刻まれたこの言葉から、DSOエージェントたちの強い理念が感じられる。

※ 設定・画像協力:株式会社カプコン

※ この設定はゲーム「バイオハザード」シリーズの世界観をもとにしたフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。

— 東京マルイ広報に聞く フロントサイト・リアサイトへのこだわり

「センチネルナイン レオンモデル」を制作するにあたり、一番こだわったのが「フロントサイト」と「リアサイト」です。たった2つの小さいパーツですが、銃の使い勝手を最も左右するといっても過言ではありません。
仕様決定までに相当の時間を費やしましたし、試作品をいくつも作って、カプコンさんと最後の最後まで意見を交わしました。

ゴーストリング・サイト
ゴーストリング・サイト

サイトの狙いやすさやデザインの好みは人それぞれです。僕としては当社から提案した「ゴーストリング・サイト」がイチオシでした。
ゴーストリング・サイトは、フロントサイトを囲むような円形をしています。この形状にそって蓄光剤で目印を入れれば、暗闇でリングが光って浮かび上がります。それがバイオハザードらしくてカッコいいと思ったわけです。
しかし、カプコンの竹内常務から「狙いにくい」「昔、ゴーストリング・サイトをのせたモデルを見たことがあり、古いイメージがある」という意見をいただきました。
その後リング部分を半分にカットしてみたりもしましたが、これでは他のサイトと同じですしインパクトがありません。なにより半円ではさらに狙いにくくなりました。

試作サイト
CAD図

次に提案したのは「三角形」をモチーフとしたデザインです。以前デザートイーグルのレオンカスタムで三角のセフティを作ったせいか、僕の中では「レオン=三角」という印象がありました。
サイトの形自体を三角にする方向でデザインを考えていましたが、僕はお世辞にも絵が上手いとは言えないので、どうしても制作担当にイメージが伝わりません。
結局は自分で試作のサイトを作り、サイトのないP226と一緒に大阪のカプコン本社へ持ち込みました。

その場で数種類の試作サイトを付け替えながら、竹内常務と銃火器プロデューサーの竹中さんにターゲットを狙っていただき、意見交換をしましたが、結局は「好き」か「嫌い」かという好みの話になってしまうのが難しいところです。
ちなみにサイトのドット部分を三角にしたものも用意していましたが、実際に使ってみると正直使いづらかったです。やはり理屈だけでデザインしてもダメですね…。
実際問題、三角のドットは蓄光剤も上手く入らないため、この案も没になってしまいました。

結局この時は決定に至らなかったのですが、何度もカプコン本社のある大阪へ行くことができませんので、試作を作ってサイティングした状態の写真を送るということを繰り返し、やっと最終仕様が決定しました。
サイト自体はオリジナルながらどこかリアリティのある形状です。ドットはフロントサイトが四角、リアサイトは三角が2つ向き合う形となり、かなりユニークなものに仕上がっています。特に「フロントサイトのドット=丸型」という常識を変えたかった、というのがサイトデザインの根底にあります。

ただ、最終的には僕も竹内常務も、「フロントサイトのドットはやっぱり丸型が合わせやすい」という結論になりました。決して四角のドットが使いづらいというわけではなく、銃を構えてサイティングするとフロントサイトが少し遠くにあるので、ぼやけて丸型に見えてしまうんです。
これまで実際のガンメーカーがドットを丸型にしてきたのは、きっとこういった理由があるんでしょうね。

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