カプコン公式設定・開発秘話 センチネルナイン徹底解明

5 仕様決定への道程(2) 後期デザイン編

東京マルイ広報課 島村

試作品

ラフスケッチからデザイン案へと進み、第4回でついに「銃の形」をした試作品(写真右)があがってきました。製品の開発としてはここからが本番です。

第5回では、この「試作品」と「製品(最終品)」とで特に大きく変わった部分(フラッシュハイダー、ボディカラー、そして画像からは変化が分かりませんがグリップとメダリオン)を中心にご紹介します。
本当は1番こだわったと言っても過言ではないフロント/リアサイトとトリガーについてもお話ししたかったのですが、1ページに収まりきらなかったため、コチラはまた次回に!

フラッシュハイダー

カプコンさんからの提案でシンプルになった試作品のフラッシュハイダーですが、第3回で登場した「ストライクガン(C)」のルックスにとてもインパクトがあり、スパイクのデザインだけでもなんとかフラッシュハイダーに取り入れたいと思っていました。

お互いにたくさんのデザインを出し合い、製品版ではフラッシュハイダー前面にピラミッド型のスパイクを配置することになりました。ですが、このデザインを採用するかはかなり悩みましたね。
というのも、スパイクが付いてはいますが、実はこれをストライクガン的に使うことができないのです(※1)。
そこで、カプコンさんの提案により「マズルフラッシュの拡散を防ぐための形状」という設定になりました。

フラッシュハイダーはバレル先端のネジ部に装着していますが、当社のP226E2は、バレルに重いものを付けると作動不良を起こしてしまいます。そのため、ネジのピッチ(溝の間隔)を変えたりネジの向きを逆にすることで、電動ガン用に発売しているサイレンサーなどが付けられないようにしてあります。

最終的に、試作時よりもフラッシュハイダーをひとまわり大きくして迫力を持たせ、さらにスパイクの鋭利さを際立たせるために「アルミ切削加工」を採用しました。かなり贅沢なパーツになっています。

試作品
試作品
※1・「ストライクガン」は、もともと「相手に銃口を押し付ける」という状況を想定したカスタムです。フレームに固定したスパイク付きのプレートを銃口の前面に配置して、押し付けた銃口が直接相手の身体に当たらないようにしています。
というのも、P226の構造では「バレルが押されていると発射ができない」という弱点があるためです。
「センチネルナイン」のようにバレルに直接スパイクが付いていると、ストライクガンのように銃口を押し付けたとしても、バレルが押されてしまい発射できなくなってしまうのです。

ボディカラー

銃の重みや渋みを出すためにカラーはブラック1色で統一しようと考えていましたが、試作品を持って大阪のカプコン本社へお邪魔した際、総合プロデューサーから「外連味(けれんみ)が足りないのでは?」という指摘をいただきました。
「外連味」というのは、言い換えれば「ハデさ」や「少し芝居がかった演出」といったところですね。ゲーム世界での存在感を持たせるために、もう少し目をひく何かが欲しいということでした。

過去のバイオハザード限定モデルには、ステンレスタイプのデザートイーグルやゴールドルガーのようにハデなモデルがありました。サムライ・エッジもグリップの木目が良いアクセントになっていて、それぞれの銃にキャラクター性があります。
そこで、「シルバーとブラックのツートーン」ならばDSOのこだわりも表現できますし、精悍なイメージもあるのでは?という意見が出たのです。
銃のシルバーというのは、大半がサビに強いステンレス素材で作られています。こういったサビ対策は、銃に命を預ける者ほどこだわる部分ですね。

さて、シルバーにできるパーツはスライドやフレームだけではありません。P226E2には色々なレバーやボタンがありますし、もちろんトリガーやハンマーの色もじっくり検討する必要があるでしょう。

東京マルイでは、シルバーとブラックのパーツを用意して考えられる限りの組み合わせを写真に撮り、撮った写真を全てならべ、どの組み合わせがベストなのかをカプコンさんと共に検討しました。

製品版を見ていただければ分かるように、製品としてはシルバーとブラックの見た目的なバランスがとれていますし、DSOの「可動パーツの腐食耐性をアップする」という目標(第3回参照)も果たせています。

シルバーのパーツについては、もう1つゲーム世界の設定に合わせたある意図があるのですが、それは第6回にて、バイオハザードの設定としてお話ししたいと思います。

グリップとメダリオン

グリップの形状は、右手での使用を想定した「左右非対称形」になっています。
試作品までは形状もメダリオンの配置も左右対称だったのですが、握ってみると右側面のメダリオンがジャマなばかりか、発射時には反動のせいで手の平が痛い始末。 もしこれが本物の銃だったとしたら……おそらく「痛い」ではすみません。大ケガです。

バイオハザード限定モデルをデザインする上で大切にしているのは「リアリティ」です。「オリジナルだけれど、実際にあってもおかしくないカスタム」をいつも目指しています。
そのため、右側面のメダリオンは「実際にはあり得ない」ということでオミットすることになりました。

グリップを「右手での使用専用」にした際に、「左利きの人はどうするのか?」「スイッチングする(逆の手に持ちかえる)場合は?」といった意見もありました。
もちろんそういったシチュエーションも十分考えられますが、そもそもP226E2は「マガジンキャッチ」や「デコッキングレバー」といったレバー・ボタン類が右手用に設計されていますし、左手で使用する状況は右手のそれに比べて限られています。

そこで、今回は握りやすさや握った時の安定感を第一に、「手になじむグリップ」というレオンのこだわりをひたすら追求しています。
例えば左側面の「サムレスト」だったり、すべり止めの具合だったり。その効果は、実際に右手でグリップを握っていただければ実感できると思いますよ。

これまで発売してきたバイオハザード限定品には、ほとんどのモデルにメダリオンが入っています。今回もグリップにメダリオンを入れるというのは決定していたので、最初の頃はDSOのエンブレムをCG合成してカプコンさんへ提出していました。ここまでは簡単です。

しかし、いざ立体物のメダリオンを作るとなると話は別です。
今まで作ってきたRPDやS.T.A.R.S.のメダリオンはシンプルな図案でしたが、今回のDSOエンブレムはかなり複雑で、これを直径17mmほどのメダリオンにするというのは至難の業。金型でメダリオン自体は作れますが、細部までキレイに着色することは不可能に近く、コスト的な問題もあります。
例えば「シールを貼る」「スタンプで表現する」といった代案も出ましたが、やはり立体的なメダリオンは高級感が違いますし、妥協もしたくありません。

サムライ・エッジのメダリオン(右)は約20mm。センチネルナインのメダリオン(左)は約17mmで図案も細かい。

メダリオンのように、なんとか立体的なエンブレムを作れないものか…… カプコンさんとも協議しながら、様々な手段を模索してたどり着いたのが「ピンズで作る」という方法です。

金属製のピンズなら細かい図案でもキレイに色が入りますし、立体感も出すことができます。そこでメダリオン部分のみピンズで作り、グリップに埋め込むことにしました。
どこまで細かく再現できているのか、上のDSOエンブレムとぜひ見比べてみて欲しいですね。

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