カプコン公式設定・開発秘話 センチネルナイン徹底解明

4 仕様決定への道程(1) 初期デザイン編

東京マルイ広報課 島村

第4回〜5回は「バイオハザード世界でのセンチネルナインの話」をお休みして、2013年限定品「センチネルナイン レオンモデル」の仕様がどう決定していったか、その企画・開発部分をご紹介したいと思います。
連載第3回にてスタイルの方向性が(D)案に決まりました。この後は各パーツの仕様を詰めていくことになりますが、まずは変更前の(D)の特徴から見ていきましょう。

D案の主な仕様

銃口(バレル先端)には「フラッシュハイダー」を取り付けました。フラッシュハイダーは、発射時に銃口から見えるマズルフラッシュ(火炎)をおさえ、炎のまぶしさで射手の目がくらむのを防ぎ、また相手から発射位置がバレないようにするためのパーツです。
戦闘の際「相手に自分の位置を知られていない」というのは大きなアドバンテージです。これはFPSなどのオンライン対戦でも言えることですね。

また、グリップに「ビーバーテイル」という尻尾状のガードを追加しました。トリガーを引くと、勢いよく後退したスライドがハンマーを押して動かします。そのハンマーがグリップを握る手の親指付け根を直撃しないようにするためのものです。
側面には親指をかける「サムレスト」やDSOのメダリオンがあります。グリップ後部のシルエットをストレートにしたことで、全体的にかなりシャープなイメージになりました。

(D-1)は、フロントサイトとリアサイトを重ねたサイティングの図です。フロントサイトをぐるっと囲むのは「ゴーストリング」と呼ばれるリアサイトで、至近距離向きの、サイティングの素早さを重視したサイトです。図の黄色い部分は蓄光剤で、暗い場所でも狙えるようにしています。
ただ、このゴーストリング・サイトは使い勝手という点でかなり好みが分かれます。サイトについては、カプコンの竹内常務とギリギリまで調整していました。

D

(D)案提出時には、カプコンさんから「ロングマガジンにしたい」という要望もいただきました。
「P226E2」の標準的なマガジンには弾が15発入りますが、この後、弾が20発入るロングマガジンを採用することになります。

ハンドガンは装弾数(1本のマガジンに入る弾数)が少ないので、ヘタをすると大事な局面で弾切れを起こし、マガジンチェンジ(交換)しないといけません。もちろんこの間は発射できませんから、ゲームでも迫りくるクリーチャーを前に弾切れを起こし、もどかしさを感じた方も多いのではないでしょうか。
ロングマガジンにすればマガジンチェンジの回数が減りますし、1発1発を大事に使うハンドガンでは「プラス5発」の差がかなり大きいのです。

E

(E)がカプコンさんからのフィードバックです。(D)案に前述のロングマガジンを追加したものを改めて提出し、確認していただきました。

書き込みはカプコン・竹内常務ですが、さすがガンマニアというだけあって「知っているからこそできる提案」が多かったです。
あまり銃に詳しくない方だと外観重視の提案になりがちなのですが、竹内常務の提案は「実際の使い勝手や各パーツの役割」も考慮した内容になっています。

ちなみに、このフィードバックあたりから「バイオハザード」という作品世界での「センチネルナイン」のコンセプトもかたまりはじめました。
カプコンさんからの提案内容には、連載第2回で登場した「汎用性、確実性、安定性」というキーワードや、第3回でDSOが設定した課題と連動している部分もあります。第2〜3回の背景設定と以下の提案内容を比べていただくと、「なぜそのカスタムにこだわるのか」が見えてくるかと思います。

改良点 カプコンからの提案内容
フラッシュハイダー シンプルな形状にして、上部にポート(穴)を設けたい。
【解説】銃は火薬の発火時に発生するガスの圧力で弾を飛ばします。ポートがあればそこからガスが上に吹き出し、はね上がる銃口をおさえつけてくれるのです。
ボディカラー 全体的にカラーの変更は可能か。(マットブラックやブルーがかった黒など)
【解説】作戦で使う銃といえば黒が多いですが、提案にある「マットブラック」は表面をザラッとさせて光沢をなくしたもの、「ブルーがかった黒」はサビをおさえる薬(ブルーイング剤)をつけたものを指しています。
ハンマー デザイン的な統一感を出すため、肉抜きの形状をハンマーに合わせたい。
【解説】ハンマーに穴を空けて軽くすると(肉抜き)、トリガーを引いた時のハンマーの動きが早くなり、弾が発射されるまでのタイムラグが短くなります。
トリガー シングルアクションでの発射に適した形状にしたい。
【解説】P226E2はシングルアクションとダブルアクション(※1)どちらでも発射可能です。ダブルアクションの方がトリガーが重く、トリガーを引く距離も長いため、作戦行動中はすぐに対処できるシングルアクションの発射が向いています。
グリップ もっとハイグリップにしたい。グリップのシルエットはOK。
【解説】グリップを握る手の位置がバレルの高さに近いほど、発射時に銃口がはね上がりにくくなります。
フロント/リアサイト ゴーストリング・サイトは見づらいので、輪の上半分をカットしてはどうか。
【解説】サイトの狙いやすさは、銃そのものの使い勝手も左右しかねません。ドット(目印)の見やすさ、サイト越しの視界の広さ、フロントサイトとの合わせやすさなどを考慮したデザインが必要です。
ロングマガジン 「SEALsマガジン」にしたい。
【解説】SEALsが使用しているP226用ロングマガジンが、通称「SEALsマガジン」です。(E)のマガジンは標準的なP226用マガジンを20発サイズにのばしたもので、SEALsマガジンとはボトム(底)まわりのデザインが異なります。

※1・「シングルアクション」「ダブルアクション」とはハンドガンの発射メカニズムのこと。トリガーを引く前にあらかじめハンマーが起きていればシングルアクションでの発射、ハンマーが起きていない状態でトリガーを引けばダブルアクションでの発射となる。

試作品の作成

東京マルイでは(E)のフィードバックが製品として実現可能かを検討しながら、いよいよデザイン確認用の試作品作りに取りかかります。

実際に作成した試作品が下の(F)です。新しく作るパーツはもちろん金型がありませんから、デザインが決まっていないトリガーやフラッシュハイダーなどは、担当が1つ1つ手づくりしています。
手づくりとはいえ、その仕上がりはまさに職人技。写真でしかお見せできないのがもったいないほどです。

試作品を作るまでは、あくまで理論上のデザインです。「本当に使いやすいか」といった感覚的な部分については、実際に試作品を作って使ってみないと確認することができません。また、銃を平面で見た時と立体で見た時では、印象が違うことも多いですね。
そういった細かい修正を加えて、完成した試作品をカプコンさんに確認していただきました。

かなり最終仕様に近づいてきた試作品(F)ですが、試行錯誤はまだ続きます。詳しくは「仕様決定への道程2・後期デザイン編」にて!

F
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